加熱温度の変化による、豚肉の状態への影響について徹底解説!

料理

今回は、様々な加熱温度によって起こる豚肉への影響について、詳しく解説していきます!

この記事では、加熱温度によって起こるタンパク質の変性や組織構造の変化、それに伴う食感(柔らかさ・硬さ)やジューシーさの違い、肉の色の変化、そして脂肪の融解・分布の変化について掘り下げて紹介していきます!

タンパク質の変性と組織構造の変化

豚肉を含む食肉には主に3種類のタンパク質があり、それぞれ加熱によって変性(構造変化)する温度が異なります。

主要なタンパク質と変性温度・効果の概要は次のとおりです。

ミオシン

約50℃以上で変性開始

変性すると筋肉繊維に弾力が生まれ、旨味を感じやすくなります。

比較的低温で変性するため、中低温域の加熱でも凝固して肉の組織を引き締めます。

アクチン

約66℃以上で変性開始

変性すると肉の色が赤から白っぽく変わり、水分が搾り出されて組織が硬くパサついた食感になります。

アクチンは筋肉中の水分(肉汁)を多く保持しているタンパク質であるため、これが収縮すると内部の水分が外に押し出されてしまいます

その結果、高温で加熱し過ぎると肉が乾燥して固くなるのです。

コラーゲン

結合組織の主成分で、筋繊維同士を束ねる「スジ」に多く含まれます。

約56~60℃付近から収縮・変性が始まり、68℃以上の高温域では徐々にゼラチン化(溶解してゼラチンに変わる)します。

十分長時間加熱すれば、硬いスジがゼラチンに変わってプリプリ・トロトロの柔らかい食感になります。

ただし低温(60℃前後)ではゼラチン化に非常に時間がかかり、例えば60℃程度でコラーゲンを変性させるには24時間ほどの長時間加熱が必要になる場合があります。


以上のように、加熱温度によって筋肉中のタンパク質の状態が大きく変わり、肉の組織構造も変化します。

筋繊維は加熱によって収縮し、水分保持力が変化します。

おおまかに言えば、50~60℃程度の中温域ではミオシンの変性により適度な弾力と凝集性が出て肉に歯切れの良さが生まれます。

しかし65~70℃以上の高温域になるとアクチンやコラーゲンの収縮により筋繊維が大きく縮み、組織から水分が大量に絞り出されるため肉質が締まって硬くなります。

一方で、70℃超で長時間保持するとコラーゲンがゼラチン化して組織の結びつきが弱まり、ほぐれるように柔らかくなる効果もあります。

このようなタンパク質と組織構造の変化が、次に述べる食感やジューシーさの違いを生み出します。

食感(柔らかさ・硬さ)とジューシーさの変化

加熱温度によるタンパク質・組織変化は、そのまま肉の柔らかさやジューシーさに直結します。

一般に、肉のタンパク質は約56℃付近から変性が始まり、温度が上がるにつれて筋繊維が収縮するため肉質は徐々に硬くなります。

しかし適切な温度で加熱を止めれば、肉は柔らかくジューシーな状態に仕上がります。

ポイントとなるのは66℃前後の領域です。

前述の通り、この温度帯でアクチンの変性が起こり始め、大量の肉汁が流出します。

例えば豚肉の中心温度を60℃程度に抑えれば、中心部はほんのり桜色が残り、水分が保たれて非常に柔らかくジューシーです。

実際、「中心のピンク色を保ちつつ柔らかく仕上げるには中心温度60℃未満に留める必要がある」という指摘もあります。

この温度帯ではミオシンだけが変性して旨味や適度な弾力をもたらし、アクチンは変性していないため水分保持能力が維持されている状態です。

逆に65~70℃を超えると急激に肉汁の損失が増え、肉は硬くパサついた状態になってしまいます。

特にコラーゲンの少ないヒレやロースなどの赤身肉では、高温で加熱し過ぎると保水するゼラチン質も少ないため、ただ硬く乾いた仕上がりになりがちです。

一方、コラーゲンの多い部位(例えばバラ肉や肩肉などのいわゆる硬い部位)は、70℃以上の高温で長時間加熱することで逆に柔らかさを取り戻せます

筋繊維自体は高温で非常に硬くなっていますが、十分な時間煮込むことで結合組織のコラーゲンがゼラチンに変わり、肉全体がほぐれるように柔らかくなるからです。

いわゆる煮込み料理や低温調理長時間(真空調理で長時間加熱)で「ホロホロ」と崩れる肉になるのはこの現象によります。

ただし、コラーゲンのゼラチン化には時間が必要で、温度が低すぎると非常に長時間かかるため、例えば豚バラ肉を低温調理する場合、64℃では24時間程度、70~80℃でも数~十時間規模の加熱が必要だったとの報告があります。

このように、柔らかさは温度と加熱時間のバランスによって得られるものです。


ジューシーさ(肉汁の多さ)は主に肉に含まれる水分と脂肪によって感じられます。

加熱中、筋繊維が収縮して絞り出された水分が「肉汁」として内部や表面に現れます。

内部温度がおよそ60~65℃に達する頃、肉は目に見えて水分を放出し始めます。

これは適度であれば肉を噛んだときに滴るジューシーさとなりますが、行き過ぎれば単に乾燥してしまいます。

したがって内部温度をどこで止めるかがジューシーさの鍵です。

低めの温度で火を止めれば水分が多く残り、高温まで加熱すればするほど水分損失が増えてジューシーさは失われます。

一方、肉に適度な脂肪(サシ)がある場合、脂肪の融け出す効果である程度ジューシーさを保つこともできます。

脂肪は水分とは異なり蒸発しづらいため、高温で水分が抜けても溶けた脂が肉をコーティングして口当たりの潤いを補ってくれるからです。

総じて、中まで火を通しすぎないことと脂肪のある部位を活かすことが柔らかくジューシーな豚肉調理のポイントになります。

特にロースやモモのような脂肪の少ない部位では中心温度を上げすぎないほうが良く、バラや肩ロースのように脂肪やコラーゲンの多い部位は適切な温度で時間をかけて加熱することで格段に柔らかくできます。

色の変化(赤身から白への変化)

豚肉は生の状態では淡い赤色~ピンク色をしていますが、加熱が進むと色が変化します。

主な要因は筋肉中の色素タンパク質であるミオグロビンの変化です。

豚肉は牛肉などに比べミオグロビン含有量が少なく(牛約8 mg/gに対し豚は約2 mg/g程度)、もともと色が淡い「白っぽい肉」に分類されます。

ミオグロビンは酸素を貯蔵する色素で、生肉では鮮やかな赤~桜色を呈しますが、加熱によって変性すると色が薄くなり、最終的に灰白色に変化します。

実際、豚肉は十分に加熱されると「白っぽい肉」に見えることから、英語圏では “the other white meat”(もう一つの白い肉)とも称されます。

加熱温度による色の変化は明瞭で、おおよそ60℃付近で肉の赤みが薄れ始めます。

具体的には、内部温度が約60℃に達すると、元の生肉の赤色に透明感がなくなり、淡い桜色(ピンク色)に変わってきます。

これはミオグロビン中の鉄が変化して赤色を失うためです。

さらに温度が上がり65~70℃以上になると、肉の中心部から赤みが消えて不透明な灰白色になります。

豚肉の場合、従来は「中心部の色が完全に白っぽくなるまで火を通す」ことが安全の目安とされてきました。

この状態(内部70℃超)では見た目に赤い部分は無くなり、繊維質が白~薄茶色に見えます。

例えば中心温度75℃で1分以上加熱すれば、肉の断面は均一に薄いグレーがかった白色となり、生のピンクは全く残りません。

一方、近年では中心が薄いピンク色の状態(例えば63℃程度まで加熱し、その後余熱で殺菌する方法)が豚肉でもジューシーに仕上がる「ミディアム」な焼き加減として提案されるようになっています。

低温調理では中心温度を57~60℃程度に保ってピンク色を残しつつ安全に調理することも行われます (※安全性については後述)。

このように、中心部の色は内部温度の良い指標となり、調理の火の通り具合(レア/ミディアム/ウェルダン)を判断する目安にもなっています。

なお、表面の色も温度によって変化します。

表面温度が約150℃以上になると、肉のアミノ酸と糖の反応(メイラード反応)が活発になり、こんがりとした褐色の焼き色がつきます。

フライパンで焼いた豚肉に香ばしいきつね色のクラストができるのはこのためです。

オーブンや直火グリルでも、高温乾熱によって表面が褐色~焦げ色に変化します。

これらの表面の焼き色は風味に大きく寄与しますが、内部の赤→白の変化とは別の現象(メイラード反応やカラメル化)です。

低温調理(真空調理)の場合、加熱中は表面が高温にならないため色づきませんが、仕上げに短時間だけ高温のフライパンやバーナーで焼き目をつけることで、美しい焼き色と風味を補うのが一般的です。

脂肪の融解や分布の変化

肉に含まれる脂肪も温度によって状態が変わり、肉質と風味に影響を与えます。

豚肉の脂肪(いわゆるラード)は比較的低い温度で軟化・融解し始め、一般に54~60℃程度で徐々に液状化が進みます

例えば、ロースや肩ロースに細かく入ったサシ(筋間脂肪)は加熱によって溶け出し、筋繊維の隙間に染み込んだり、肉の外へ流れ出たりします。

内部温度が約60℃に達する頃には、脂肪がじわじわと溶けて肉全体がしっとりし始めます。

このプロセスを料理用語で「脂が回る」とか「脂が落ちる」と言い、肉に旨味とコクを与える重要な現象です。

脂肪の融解による効果として、風味の向上と食感の変化が挙げられます。

脂肪が溶けると、それに含まれる風味成分が肉に行き渡り、口に入れたとき豊かなコクと香りを感じます。

また、溶けた脂肪分が筋繊維を潤滑することで、肉質が滑らかでジューシーに感じられます。

特に豚バラ肉のように脂肪層が厚い部位では、脂肪が適度に溶け出すことでプルプルとした舌触りやジューシーさが増します。

一方で、高温で加熱しすぎたり長時間加熱した場合の脂肪の動きにも注意が必要です。

脂は温度が上がるほどどんどん溶けて流動性が増し、最終的には肉の外に流れ出てしまいます。

フライパンで豚肉を焼くと脂身から大量の油がフライパンに溜まるのは、脂肪が完全に融解して肉から抜け出た状態です。

オーブンでローストする際にも、天板にポタポタと脂が滴ることがあります。

このように脂肪が流出してしまうと、肉自体はその分パサつきやすくなり、風味も流出した脂とともに失われます。

したがって、ジューシーさを保つには肉から脂が出すぎないよう留意することも大切です。

調理法によっても脂肪の残り方は変わります。

例えば低温調理(真空調理)では、密封袋の中で加熱するため脂肪が溶けても肉から逃げる場所がありません。

そのため肉の中や袋の中に脂が留まり、調理後に表面に白く固まった脂質が残ることもあります。

低温調理後に表面を焼いて仕上げるとき、この残った脂肪が熱で再び溶け出し、表面でカリッと焼けて風味を増す効果もあります(コンフィのように低温の油脂中で加熱する調理では、余分な脂肪分が抜けにくい一方、仕上げの焼きでカリッとさせることができます)。

一方、直火や高温オーブンで焼く場合は、余分な脂がどんどん流れ出て肉から落ちていくため、仕上がりは比較的さっぱりします。

脂肪の多い豚バラやスペアリブをオーブンでローストすると、加熱中に脂が下に落ちて肉自体の脂肪含量が減り、出来上がりは脂身が小さく縮んでいるでしょう。

逆に言えば、高温乾熱調理では余分な脂を落としてヘルシーに仕上げることも可能です。

最後に脂肪に関する温度効果として、カリカリ感の形成を挙げておきます。

豚肉の脂身部分(皮に近い背脂など)は、高温で水分が飛び脂肪が完全に溶け出すと、コラーゲンなどが揚げられたような状態になってカリッとした食感になります。

これは焼き豚の表面やベーコン、豚カツの脂身などで見られる現象です。

ただし温度が低いままだと脂肪が十分に溶けず、白くブヨブヨした食感が残ってしまいます。

カリッとさせたい場合は一度高温まで上げて脂を完全に溶かし出し、表面の水分を飛ばす必要があります。

調理法によっては、低温で中まで火を入れた後に最後だけ高温加熱することで、中はジューシーなのに脂身は香ばしくカリカリという仕上がりも実現できます。

加熱温度と食中毒防止の関係

豚肉を安全に食べるためには、十分な加熱によって内部の細菌や寄生虫、ウイルスを死滅させる必要があります

加熱温度と食中毒リスクには密接な関係があり、温度が高いほど短時間で菌やウイルスを死滅させることができます。

食品衛生上、各国で豚肉の加熱基準が定められており、日本でも豚肉を提供する場合の基準があります。

厚生労働省の基準では「豚肉の中心部の温度を63℃で30分間以上加熱するか、これと同等以上の殺菌効果がある方法で調理しなければならない」と定められています。

63℃で30分というのはかなり長いように感じられますが、これは低めの温度であっても十分な時間加熱すれば細菌や寄生虫を死滅できることを意味します。

同等の殺菌効果とは、例えば70℃なら約3分、75℃なら約1分間の加熱でも63℃30分と同等の効果が得られるということです。

実際、食中毒菌の多く(サルモネラ、病原性大腸菌O157、カンピロバクターなど)は75℃で1分以上の加熱でほぼ死滅し、寄生虫のトキソプラズマや旋毛虫(トリヒナ)も同程度の加熱で死滅します

ウイルスでは豚由来のE型肝炎ウイルスが問題となりますが、こちらも加熱に弱く、概ね70℃程度で不活化できます(ノロウイルスは85℃1分必要ですが、豚肉で問題となる主なウイルスはE型肝炎です)。

低温調理が流行する中で懸念されるのは、「中心温度さえ達すれば即OK」という誤解です。

実際には時間と温度の組み合わせが安全性を左右します。

例えば中心温度が63℃に達してもすぐに取り出したのでは不十分で、少なくとも数十分その温度を維持することで初めて内部まで殺菌できるのです。

一方、中心温度75℃まで上げれば内部の細菌は数十秒で死滅します。

調理現場では、この性質を利用して「低温長時間」か「高温短時間」で安全性を確保します。

前者の例が真空低温調理で63℃で数時間加熱する方法、後者の例が従来から推奨される中心75℃以上のしっかり加熱です。

特に注意すべきは、豚肉を生焼けで食べてしまった場合の健康リスクです。

豚肉には内部に寄生虫(トキソプラズマや旋毛虫)が潜んでいる可能性や、表面に付着した細菌が断面を通じて内部に入り込むリスクがあります。

また、ウイルスではE型肝炎ウイルスは加熱不十分な豚肝臓や肉を介して感染することが知られており、日本でも過去に生の豚レバーによるE型肝炎事例が報告されています。

そのため、米国農務省(USDA)は「豚肉(およびジビエ)については60℃以下の加熱はE型肝炎ウイルス感染のリスクがある危険温度帯である」として最低でも61℃以上で調理することを推奨しています。

安全のためには、中心温度と時間をしっかり管理し、疑わしい場合は基準より高めの温度まで加熱することが求められます。

なお、豚ひき肉(挽肉)のように加工過程で内部まで菌が入り込みやすい肉については、さらに高い温度での加熱が推奨されます。

ハンバーグや餃子の餡などの豚ひき肉料理では、表面だけでなく内部にも菌が存在する可能性があるため、中心部まで75℃以上に加熱することが家庭でも指導されています。

これは牛ひき肉や鶏ひき肉と同様の考え方で、ひき肉調理品は「中心まで完全に火を通す」ことが鉄則です。

以上を踏まえると、豚肉は低温で調理して最高の食感を引き出すことも可能ですが、その場合は時間を十分にかけて安全性を確保する措置が不可欠です。

家庭や飲食店で低温調理を行う際には、厚生労働省の提示する「中心63℃30分相当」の基準を守るか、少なくとも食中毒リスクの高い高齢者・小児・免疫の弱い人には中心75℃1分以上の加熱を徹底することが求められます。

美味しさと安全のバランスをとるために、温度計や調理ガイドラインを活用し、科学的根拠に基づいた加熱を心がけることが大切です。

調理法による温度管理と仕上がりの違い

同じ豚肉でも、調理方法によって肉に伝わる熱の加減や速度が異なるため、仕上がりの肉質にも違いが出ます。

それぞれの調理法での温度特性と留意点をまとめます。

フライパンやグリル(直火焼き)調理

フライパンや鉄板で焼く調理法では、熱源との接触面が非常に高温(場合によっては200℃以上)になり、短時間で表面に火が入ります。

これにより香ばしい焼き色と風味が付与されますが、内部への熱の伝わり方は比較的急峻で、表面から中心に向かって温度勾配が生じます。

厚い豚肉のステーキやトンテキなどをフライパンで焼く場合、表面がこんがりする頃には外側の層は70℃以上のウェルダンになりやすく、中心部との火の通りに差が出ます。

そこで肉を裏返したり火加減を調整したりしながら、中心が狙った温度に達した時点で火から下ろすことが重要です。

直火調理では短時間で高温に晒すため、肉汁が流出しやすくパサつきに注意が必要ですが、逆に言えば短時間で仕上げることで必要以上の水分損失を抑えることもできます。

薄切り肉の炒め物や焼肉では、肉片が薄い分全体がほぼ均一に加熱されるので、短時間で中まで火が通り、硬くなりにくいメリットがあります。

オーブンやオーブントースター調理

オーブン加熱は周囲を一定温度の熱風(対流熱)で包み込むため、肉全体を比較的均一に加熱しやすい方法です。

大型の塊肉(例えばポークローストや焼豚)でも、オーブン温度と時間を調整すれば中心までじっくり火を通すことができます。

一般にオーブン温度を低め(120~150℃程度)に設定して時間をかけて加熱すれば、表面と中心の温度差が小さくなり、中心が狙いの温度に達するころにも表面が過度に乾燥しにくくなります。

これを低温ローストと呼び、ジューシーに仕上げるコツです

一方、高温オーブン(180~200℃以上)で短時間で焼き上げると、表面には良い焼き色が付くものの水分の蒸発も多く、フライパン調理同様に外側がややパサつく可能性があります。

オーブン調理では庫内の湿度も影響します。

庫内が乾燥していると水分損失が大きくなるため、塊肉を焼く際に途中でアルミホイルで覆ったり、天板に水を張ったりして適度な湿度を保つテクニックもあります

オーブンは温度管理が比較的容易で、温度計を刺して中心温度をモニタリングしながら調理しやすい利点があります。

ロース肉やモモ肉のローストでは、中心温度を例えば65℃程度で止めて余熱で数分保温する、といった方法でしっとり仕上げることが可能です。

低温調理(真空調理・スロークッキング)

近年普及した低温調理器(いわゆる「Sous videソースヴァイド」調理)では、精密に温度制御されたお湯に真空パックした肉を長時間入れておくことで、狙った温度までゆっくり中心まで火を通します。

この方法の最大の利点は、肉全体をほぼ一定の温度に保てるため、過剰な加熱によるタンパク質変性を避けられる点です。

例えば豚ロース肉を58℃の恒温水槽に1時間浸ければ、中心までほぼ58℃になり、それ以上温度が上がらないので非常に瑞々しい“ミディアムレア”状態で火を通すことができます。

低温調理では前述のようにアクチンの変性温度(66℃)を超えない範囲で調理できるため、ミオシンだけが変性して旨味と適度な歯切れを与え、アクチン由来の水分損失は最小限に抑えられます。

その結果、肉は非常に柔らかくジューシーに仕上がります。

加えて、低温でゆっくり加熱することで肉汁の対流が穏やかになり、肉の中で肉汁が偏ることなく均一に行き渡るとも言われます。

低温調理の留意点は時間と安全性です。

温度が低い分、中心まで均一な温度に達するのに時間がかかりますし、殺菌にも長時間を要します。

したがって適切なガイドラインに従い、十分な時間加熱する必要があります。

また低温調理だけでは表面に焼き色や香ばしさが付かないため、調理後にフライパンやバーナーで表面を焼き締める(シアリング)工程を加えるのが一般的です。

これにより見た目と風味を補完できます。

煮込み(煮沸・圧力鍋)調理

豚肉を水や汁とともに煮込む料理(ポトフ、角煮、カレーなど)では、加熱温度は沸騰点付近(約100℃)まで上がりますが、水分に浸っているため肉自体が乾燥することは少ないです。

むしろ長時間の煮込みでコラーゲンが十分にゼラチン化し、非常に柔らかくほぐれる質感になります。

圧力鍋を使えば120℃程度の高温で短時間に軟化させることも可能です。

煮込みでは脂肪も煮汁に溶け出していくため、仕上がりはさっぱりしやすく、煮こごり(煮汁を冷やしたゼリー)中にゼラチン化したコラーゲンや脂が分布する形になります。

煮込み料理では中心まで確実に加熱されるため安全性は高くなりますが、その分風味や栄養も煮汁側に流出しやすいです。

後で煮汁ごとソースにしたり煮こごりも含めて提供する料理では、流出した旨味を無駄にしませんが、煮汁を捨ててしまう調理では水溶性の栄養や風味損失がある点も知っておく必要があります。

まとめ

本記事では、加熱温度の変化による、豚肉の状態への影響について紹介しました!

以上のように、フライパン、オーブン、低温調理、煮込みなど調理法によって加熱のされ方と温度管理のポイントが変わります。

それぞれの手法で「狙った温度をどのように肉全体に行き渡らせるか」「不要な水分・脂肪をどれだけ落とすか/閉じ込めるか」を考えて調理することで、豚肉の美味しさを最大限に引き出しつつ安全に仕上げることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました